村上春樹・著「海辺のカフカ」を読んでみた感想。【ネタバレ】

先日、歯医者の待ち時間に村上春樹さんの「海辺のカフカ(上下)合本版(新潮文庫)」を読んだのですが、これが結構、読ませるので新たな驚きでした。

ちょっと唸(うな)ったくらいです。

上・下巻ある長編ですが、しっかり読まないと、と改めて感じた作品でした。

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なぜ四国が舞台なのか?

これは明らかに大江健三郎さんの「万延元年のフットボール」を意識しています。

大江健三郎さんは、「風の歌を聴け」(村上春樹・著)の時の芥川賞審査委員でした。

「風の歌を聴け」に対する大江さんの選評は以下の通りです。

「今日のアメリカ小説をたくみに模倣した作品もあったが、それが作者をかれ独自の創造に向けて訓練する、そのような方向付けにないのが、作者自身にも読み手にも無益な試みのように感じられた。」

以上のような選評を述べ、選外としました。

翌年の「1973年のピンボール」では、大江健三郎さんは支持に回っています。

「海辺のカフカ」で、自分の母親と知らずに関係を持ってしまうのはナラティヴストラクチャーであり神話です。

大学紛争の話も出て来ますが、万延元年の一揆を意識しています。

この作品の中で、同じ事は歴史上、何度も繰り返されるという神話的構造を描いています。

百年の孤独との類似

四国の森は、「百年の孤独」(ガブリエル・ガルシア=マルケス・著)のマコンド村と同じと考えてもいいでしょう。

現実ではありえない描写があります。

類似と言いましたが、仮想の四国の森という舞台を使って春樹さんは、マルケスに挑戦しているわけですね。

自分にどれだけ「魔術的リアリズム」という表現ができるか、というチャレンジです。

この点、ただ安穏と大衆受けする作品を量産する凡百の作家とは全く異なります。

まとめ

「海辺のカフカ」は英訳され、ニューヨーク・タイムズ紙で2005年の「ベストブック10冊」および世界幻想文学大賞に選出されています。

実際に読んでみて「海辺のカフカ」は、ブッカー賞クラスの作品だと思います。

ブッカー賞の選考対象は、イギリス連邦およびアイルランド、アメリカ国籍の著者によって英語で書かれた長編小説に限られるので、春樹さんが国籍を変えない限り、ブッカー賞の受賞はありません。

ただし、村上春樹さんが英語圏の国籍であったなら、複数回ブッカー賞を受賞していてもおかしくないです。

作家として、どれだけの事ができるのかという挑戦です。

封建社会においては、貴族の息子は貴族、農家の息子は農家だったので、実存という概念はありませんでした。

しかしナポレオン戦争後、封建制は崩壊へと向かいます。

また海辺のカフカは、戦争や貧困という繰り返される歴史(神話)の中で、一人の人間(実存)がどう生きていくのかというテーマを真正面から取り上げた作品とも言えます。

最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。